2016年11月17日
沖田ダムの森も,秋から晩秋の風景となりました。9月頃はイガグリや栗の実も落ちていて,今年は拾い集めて茹でて食べました。10月になると,キンモクセイが植えられている道沿いの甘い香りに例年のように郷愁を覚えました。また,これまでは殻だけ落ちていて注意を払わなかったものに,アケビがあります。甘い物に飢えていた時分には,時に口にしていたのがアケビです。散歩の途中,落ちたばかりのアケビを拾ったものが(写真1)です。
50年ぶり位になるでしょうか,久しぶりに口にすると,ほんのりとした甘みがありました。しかし,黒い種もあり完食はできませんでした。昔は,これでも充分に甘く感じられたと思います。上を見上げると,枝に実をつけていました(写真2)。
そのうちに,鳥たちの餌になり,殻だけが落ちてくるのでしょう。また,ムカゴを採っている人に出会ったこともあります。里山には,色々な食べものがあり,動物や鳥たちにとっても絶好の食糧の確保の場所になっていることを実感させてくれます。動物と言えば,猪の子どものうり坊は2~3回見かけましたが,先日は鹿らしきものを見かけました。以前,都農町に住んでいた頃の早朝,都農ワイナリーの麓で親子連れをはっきりと見たことがあるので,恐らく間違いないと思います。
すっかり秋らしい風景となりました(写真3~写真5)。これから,落葉がすすみ,冬の風景に変わっていきます。
そのようなダムの小道を歩きながら,思い出したことがあります。
それは,60年を越える人生の中で,今でも忘れられない光景です。勤務していたある高校で目撃した場面です。1月中旬のある朝,SHRに行くために事務室前の玄関を通りかかった時,1人の女子生徒が玄関横の赤い公衆電話で,声を抑えながらも厳しい口調で話している声が耳に届きました。「駄目じゃないの,ちゃんと起きて学校へ行かなくちゃ!」。顔を見ると私が教科を担当しているSさんでした。不登校か,あるいはその傾向があり,高校受験を控えている弟に登校を促している内容でした。今,「高校受験を控えている弟」と書きましたが,これはその後で担任の先生に,見かけた光景を伝えた時に,担任から入手した情報です。こうした情報交換が,教育現場では重要なことであることは今も変わりません。その後,このことで彼女と話をしたり,大きく事態が動くこともなく,時は過ぎて行きました。
後日談になります。その年の4月に私は他の高校に転勤になりました。夏休みの8月中旬に,担任していた女子生徒たち数名が訪ねて来てくれました。転勤後の学校のこと,進路のこと,そして友だちのことに話が咲きました。その中で,私から訊ねたのか,それとも彼女たちの誰かが「そう言えば…」という形で切り出したのか,判然としませんが,Sさんの名前が出ました。それは,私にとって衝撃的でした。「Sさんが大きなお腹を抱えてバスに乗っているのを見かけた」という内容です。聞けば,高校も退学したとのことでした。
1月中旬の,必死に高校受験を控えた弟に登校を促している彼女の姿から,妊娠・退学した彼女の姿は簡単には想像することはできませんでした。1年足らずの間に,彼女の身に起こった事態を考えると,暗澹たる思いでした。自分にできることはなかったのか,今でも忸怩たる想いがあります。今,私にできることは,彼女(下の名前はR子さんです)が幸福に暮らしていること,生まれたであろう子どもさん(30歳を越えたくらいでしょう)も幸福であってくれたらなと願うことです。
R子さん。今あなたがどういう境遇で暮らしているかわからないけれども,あなたの幸福を願っ ている人間が1人はここにいますよ…。
教師はこんな風に,何かの拍子に,思いがけない生徒の名前や顔を思い浮かべることがあるのです。
臨床福祉学科 長友道彦
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