2011年12月16日
臨床福祉学科・福祉ビジネス専攻の専門科目「高齢者・障がい者の観光」で車いす操作体験をしました。

車いすに乗るのが初体験の学生も多く、とくに留学生は関心が高かったようです。
この体験から得たものは2つあると思います。
一つ目は、これまで経験したことのない車いす操作の「技術」を得たことです。車いすの操作は、自分で操作するにしても後ろから介助するにしても意外と難しく、なかでも坂道やガタガタ道では、かなりの力を必要とするので思うように進めません。体験から操作の仕方や難しさを経験したことはこれからの人生で役に立つことでしょう。
二つ目は、車いすに乗っている方や介助する方の「気持ち」を得たことです。車いすの目線で見るとどんな世界が見えるのか、操作をするとき何に気をつけないといけないのかなど、使用者・介助者の気持ちになって考えることができたと思います。
学生の感想はさまざまでしたが、共通したことが1つあります。それは「介助してくれる人が信頼できないと不安だ」というものです。車いすを押してもらう方はすべてを介助者に委ねます。ですから、押してくれる方を「信用」はしていても「信頼」しなければなりません。この体験で相手に「信頼」されることの大切さを学んだことは、大変意義があるのではないでしょうか。
福祉の専門用語で「ラポール(信頼関係)」という言葉があります。利用者と援助者の間でお互いを尊重できる関係ということです。これは福祉の場面に関わらず一般社会でも同じです。
何らかの理由で「観光」ができない方います。その方の気持ちになって観光計画を考えることで、旅行者と観光事業者との間にラポールが生まれるのではないでしょうか。
今回の体験を将来の仕事に活かしてくれることを願っています。
福祉ビジネス専攻 三宮 基裕
2011年11月14日
平成23年10月17日、うつ病による自殺でご子息を亡くされた市村さん夫妻を大学にお招きしました。そして、社会福祉学部1~3年生および教員の約200名が集まり、ご遺族のお話を伺いました。
プロスノーボーダーとして活躍されていた市村さんの次男、伸吾さん(当時29歳)はうつ病のため宮崎で療養生活を送ります。ご家族がうつに苦しむ伸吾さんにどのように寄り添えばよいのか試行錯誤するなか、回復の兆しが見え始めた頃、伸吾さんは自室で首をつってお亡くなりになりました。手足は冷たくても、まだ身体にぬくもりが残っていると必死に救急蘇生を図ったと、静かに、そして淡々と市村さんは語ってくださいました。
市村さんは、伸吾さんの死を通して、「人がたくましく生きる」ということはどういうことなのか、そして、その事の大切さを多くの人に、とりわけ20歳前後の若い学生に伝えたいと訴えられました。幼いころから様々な形の死と向き合うこと、それは小さな昆虫でも、ペットでも、おじいさんでもおばあさんでも、色々な場面で死と遭遇し、そこで死をどう感じ受け止めるのかという体験が必要であること、そして、その死との遭遇から、自分の「生」をどう考えるのか。
私たちは死という体験から自分たちが「生きる」ということを問い直す作業をできるだけ幼いころから体験しなければならないと市村さんは語ります。また、そのことに加え、多くの挫折体験を経ることにより、心のたくましさ豊かさを培うことが自殺、ひいてはうつ病の予防に重要であると語ってくださいました。
病気のために死を選択せざるを得なかった伸吾さんや、大切なご家族を自死という形で見送らなければならなかったご遺族のメッセージは、私たちに多くのことを教えてくださいます。九州保健福祉大学社会福祉学部では、様々な痛みを抱える人々に寄り添い、その人らしい人生を歩むことができるようにともに考え、悩み、支えるという福祉のエキスパートを養成しています。これからも多くの方々の声を伺いながら、目の前にある困難に対して真摯にそして誠実に向き合うことができる援助者の養成に努めていきます。
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学生の感想より抜粋
・息子さんの死を無駄にせず、これ以上自殺者を出さないように、最愛の人を失った悲しみや命の大切さ訴えているのが伝わってきた。
うつ病で苦しんでいる人、生きることをやめたいと思っている人がその人らしく残りの人生を歩んでいけるように、生きる力を取り戻すことができるようにお手伝いをしていきたいと強く感じた。
伸吾さんの遺書から家族への感謝、大好きという気持ちがすごく伝わってきた。自分で死を決めた時の覚悟はどれほどのものだったのだろうか。辛かっただろう、恐かっただろう、悔しかっただろう。周りの人の力で救える命を増やしていかなければならないと感じた。
・自殺は逃げではないこと、日本の精神医療福祉の遅れ、社会全体のうつ病・自殺に対する捉え方、理解が乏しい問題、教育の場における自殺に対する教育の遅れなどを実感し、命(生)と死について真摯に考える時間をもつべきだと感じた。
将来、自分が人を支えるソーシャルワーカーになったときに、この講演で聞いた話を活かし、利用者の「生きる」を支え、生きる楽しさを伝えられるようになりたいと思った。そして、一人でも多くのうつ病の人の自殺へのサインを見逃さないように、知識、技術、経験を積んでいきたい。
・うつ病になった人だけではなく、その家族の支援もとても重要だと思う。社会の中にはまだまだうつ病に対して偏見を持っている人も大勢いる。そのような人達に理解を求めたり、また、当事者を守り支援していくことが専門職にとって大きな課題だと思う。
遺族の方の話を聞き、命の大切さ、また専門職の役割など、改めて考えさせられた。今日の講演を聴いて感じたこと、学んだことを忘れず残りの大学の講義のなかで自分なりに考えたり、また将来、専門職として働くようになった時、伸吾さんの思いを忘れず一人でも多くの人を救えるように努力したいと思った。
・うつ病について自分自身がどこか心の奥底では、甘えや怠惰によるものと誤解していた部分があることに気付いた。息子さんが書いた遺書を母親が読み上げた時、グッときて涙が出た。本当に辛かったんだと思う。それを聞き、けっして甘えや怠惰によるものではないのだと痛感した。
うつ病はおそろしい病気だと思うのではなく、きちんとうつ病について理解することが大事になると思う。もう少し、うつ病の人たちが肩身をせまくせず、生きられるそんな世の中になってほしい。今後、精神保健に携わろうと思っている私は、きちんと正しく理解すべきだと思った。
・今回、市村さん夫婦の講演を聴かせていただき、自殺防止に繋がる「気づき」の大切さや、自殺しよう考えている人とのつながりの重要性を学びました。
うつ病という病はどんな人がかかってしまうのか、傾向が多すぎて判別がつかないという難点があります。だからこそ、今回、市村さん夫婦がおっしゃっていたように、コミュニケーションを取ることが大切だということを改めて理解できました。
これから私が生きていく上で、うつ病など心の病を抱えた人と出会うこともあると思います。その人々と対話する時、今日学んだことを忘れずに、相手を受け止めるようなコミュニケーションをしようと感じました。
西田 美香
2011年1月25日
福祉ビジネス専攻の専門科目『福祉ビジネス概論』で、福祉ビジネスの職場見学に行きました。
福祉の仕事といえば、たいてい福祉施設や福祉サービスの事業を思い浮かべます。高齢者がますます増えているなかで、これらの福祉サービスをより安全で快適にするために、近年、関連する福祉産業が発展しています。
今回は、住まいを提供する住宅型有料老人ホームと、福祉用具を取り扱う福祉用具販売事業所の見学に行きました。
まずは、住宅型有料老人ホームから。
住宅型有料老人ホームは、何らかの理由で在宅での生活が困難になった方が移り住む老人ホームです。訪問した『コリドールくしつ』は全室個室で、看護師さんや介護士といったケアの専門スタッフもそろっています。週に1回お医者さんが往診にも来て下さるそうです。
はじめて老人ホームを訪問した学生も多く、落ち着いた空間と快適さに驚いていました。
住宅型有料老人ホーム コリドールくしつ の詳細はこちら
http://www.kishou.info/index.html

落ち着いたデイルーム 和室も備えています
備え付けのマッサージチェアは入居者に大人気
奥の本棚には入居者がご自身で借りた本を置いています
ホームが私立図書館に巡回図書をお願いしたそうです
施設長が丁寧にホームの概要を説明してくれました
みんな熱心に聞いています

空き部屋を見せていただきました
カーテンは各居室で変えているそうです。部屋の個性を大切にしています
次に、福祉用具販売事業所について。
福祉用具は、病気などでできなくなったことを補助したり、お世話をする人の負担を軽減するために使います。訪問した『カクイックス ウイング』では、車いすやベッドをはじめ、お風呂で使う用具や食器など数々の福祉用具を見ることができました。車いすの多くは、現在、中国の工場で生産されているそうです。中国からの留学生は大変興味深く話を聞いていました。
カクイックス ウイング の詳細はこちら
http://www.kakuix-wing.com/shop/shop_nobeoka.html
所長が福祉用具の種類と使い方を丁寧に説明してくれました。
留学生にはなじみのないものも多く、大変興味を持っていました。
使用体験もさせてもらいました。
はじめての車いすで緊張していたようです。
私の学生時代の研究テーマは「認知症の方のための生活環境」でした。当時、調査にご協力いただいた施設長に、こんな話をしていただき、今でも心にとどめています。
「認知症のお年寄りは、毎日自分の生活を演じている役者なんだよ。そしてケアする私たちは役者が素晴らしい演技ができるようにする演出家でないといけない。でも一番大切なのは役者が演じる“舞台装置”を整えること。どんなにいい演出家がいて、役者がどんなにいい演技をしても、その舞台装置が整ってなければ素晴らしい演技ができないからね。人生という素晴らしい舞台を成功させるためにもお互い頑張らないとね。」
“舞台装置”とは住宅や施設環境であったり、演技をサポートする福祉用具のことです。
福祉ビジネス専攻の学生は、一般企業への就職希望が多いです。福祉ビジネスに関わる仕事を目指す学生には、臨床福祉学科で福祉の基礎を学んで、役者である利用者と演出家である福祉専門職の気持ちを汲み取った舞台づくりができる人材に育ってくれればと願っています。
福祉ビジネス専攻
三宮 基裕
2010年12月15日
以前、このブログで紹介した『高齢者・障がい者と観光』という専門科目で、透析患者の観光について学びました。
透析とは、病気などで腎臓が機能しなくなったことで体内中にのこる毒素を人工的に取り除く治療です。透析の患者さんは2~3日に1回、病院で人工透析を行わければならず、長期の観光旅行が困難とされています。
透析について研究されている本学保健科学部臨床工学科の竹澤先生にお願いして、3回にかけて透析について講義していただきました。初回の講義では透析について基本的な事柄を学び、2回目は竹澤先生が以前手掛けられた透析患者の観光ツアーを紹介してもらいました。
竹澤先生の企画した透析ツアー:
株式会社アーリー・バードが運営する旅行代理店「いとしの旅舎」
http://www.ebird.co.jp/itoshi/html_tour/order/tour_toseki.html
講義の中で、「透析は2~3日に1回、必ずしないといけない。それが一生続くのです。ですから患者さんは遠くまで出かけることをあきらめている。受け入れてくれる観光地の選定と現地病院の手配に大変苦労するからです。観光の受け入れ先が透析の基本的な事を理解し、また病院との連携が図れれば、実現可能です」とおっしゃられました。
また、「食事制限などで患者の家族も同様につらい思いをしている。同じ悩みをもつ患者のご家族と一緒に旅行することで励みにもなるし、活力にもつながる。ある意味では患者さんよりも喜んでいるかもしれない」とのお話は、福祉観光を考える新しい視点でした。
「旅行をあきらめない」「家族も一緒に楽しめる」そんな福祉観光を考えたいものです。
最終回は臨床工学科の実習室を見学させてもらい、透析をするまでの準備を体験させていただきました。

通常、7分ほどで終わらせる準備ですが、学生たちは、悪戦苦闘しながらも20分ほどかけてなんとかやり遂げました。ほんのわずかですが透析患者さんの気持ちが伝わったのではないでしょうか。

短時間の講義と体験でしたが、大変意義ある時間を過ごすことができました。
安心した観光旅行を提供するには、何よりツアー参加者の事を知らないといけません。この経験を彼らの将来にきっと役立ててくれることでしょう。
福祉ビジネス専攻
三宮 基裕
2010年10月15日
福祉ビジネス専攻の学生が受講できる『高齢者・障がい者と観光』という専門科目で、ユニバーサル デザインツアー(誰にとっても参加しやすい観光旅行) に取り組んでいる旅行業者『旅のよろこび株式会社』(熊本市)の代表取締役 宮川先生を 外部講師として招き、仕事の内容や旅行の様子について 話を聞きました。
宮川さんは、もともと旅行会社に勤務しておりましたが、当時の障がいを持たれた方の旅行の添乗経験と 旅行を終えたお客さまの感謝の言葉から、この仕事にひかれ、平成18年に同社を設立しました。はじめは、なかなか認知されなかったようですが、最近ようやく口コミで人気が出はじめた とのことでした。
講義では 宮川さんのこれまでの業務の経験をお話くださいました。どの話も大変新鮮で、学生ともども聞き入ってしまい、あっという間の90分でした。
大変印象的だったのは、「ハワイの海を見たお客様が涙を流して喜ばれた。景色を見て涙を流すことなど あまりないですよね。」という言葉です。これまで涙を流すほどの景色を見たことがありますか?その涙には「景色がきれい」というだけでなく、「この景色を見に来ることができた」という喜びのほうが大きいような気がします。

国土交通省総合政策局「観光のユニバーサルデザイン化 手引き集」の表紙より
高齢の方や障がいを持たれている方は、旅行することに半ば“あきらめ”があるのかもしれません。テレビや雑誌、旅行のチラシをみても「行ってみたいがムリだろうな」という気持ちが先行しているのではないでしょうか。実際、私がおこなった高齢者へのヒアリング調査でも「若いころは旅行が好きで、婦人会の旅行には必ず参加していたけれど、年を取ってからは、ほかの参加者に迷惑をかけるから行けない」という話をよく聞きます。
宮川さん達のような取り組みが、これからますます増えてくれば、きっとすべての人があきらめることなく旅行を楽しめる時代が来るはずです。
福祉ビジネス専攻で学び、卒業した学生諸君が、旅行を企画する立場と旅行をあきらめかけた当事者の方を支える立場の双方から、ユニバーサルデザインツアーを先導する人材になってもらえることを願っています。
臨床福祉学科 福祉ビジネス専攻
三宮 基裕
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