九州保健福祉大学「QOL研究機構」を構成する3つの研究所の中から、今回は薬学研究所の取り組みについて、所長である山本郁男薬学部長にお話を伺いました。
薬学研究所で実施している研究活動について教えてください。
薬学研究所では、「薬物の副作用によるQOL低下に対処する薬学の視点からの支援法の開発」という研究テーマを揚げ、鋭意取り組んでいます。
ご存知のように国民医療費は平成15年度には約32兆円にのぼり、老人医療費はその4割近くの約12兆円に達しています。つまり、ヒトは死に至る前には必ずクスリを服用することになります。ほとんどのクスリは副作用を持っていますが、クスリをいかに有効に、安全に使うかが、QOLを高めるためにはとても大切なことです。
副作用が発生する仕組みを知る上では、服用したクスリの成分が体内の血液中にどの程度残るのかといったことや、病気の原因や健康の目安にもなる血液中のタンパク質が、クスリと結合することで起こる効果がどのようなものかといったことを研究する方法があります。これらを知ることによって、クスリの適切な選び方や使用法を開発していきます。
また、クスリが目的の患部に到達する前に吸収・分解することのないよう、オブラートやカプセルを利用していますが、さらに発展した方法として、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)と言われる技術もあります。
このようにクスリに関する広い領域に及ぶ独自の研究を展開しています。
研究活動を通じて、どのような問題を解決できますか?
クスリは、人によって様々な作用を現わします。ある人には良いクスリであっても、他の人には副作用が強く、時には肝障害や腎障害を起こすこともあります。
投与された薬剤が血液中にどの程度の濃度で残るかを測定すること(TDM法)で、患者一人ひとりに応じた安全な服用を指導することができます。さらには、服用している薬・体質・薬物アレルギーなどの記録管理(薬歴管理)も可能となります。特に、高齢者の場合は、医師や薬剤師から指導された薬を服用しないことも多いのですが、このTDM法によって、薬を正しく服用しているかも確認できます。
TDM法は迅速、簡便でかつ精度の高いものが求められますが、これらの方法の新たな開発研究も薬学研究所の重要な仕事の一つです。
また、クスリがヒトの体の中でどのように吸収され、分解・排泄されるかは、遺伝的な要因によって決まります。クスリの効く人・効かない人、副作用のある人・ない人というような違いが生じるのも、遺伝的な要因によるものです。薬学研究所では、このような遺伝子分野の研究も行うことにより、将来の医療に向けた貢献も視野に入れています。
さらに、地域の医療人にQOL研究員(共同研究員・奨励研究員)として参画してもらい、現場のニーズも反映する問題解決型の研究所にしていきたいと考えています。