学部・大学院・別科

研究力

大学は教育機関であると同時に研究機関でもあり、したがって大学教員は教育者であると同時に研究者でもあることが求められます。大学教員が研究を行うのは、新しい発見をして科学の発展に貢献したいからだけでなく、教員自身が研究の最前線にいなければ目覚ましいスピードで進歩する医学・薬学領域の講義を行うことはできないからです。つまり、研究活動は良い教育を行うためにも必須なのです。

この章では、科学研究費助成事業(科研費)などの競争的資金に本学科教員が研究代表者として採択されている研究課題をご紹介しようと思います。

科研費

まずは科研費について説明します。科研費は、全国の大学や研究機関において行われる様々な研究活動に必要な資金を助成するしくみの一つです。科研費を受けようとする者は、十数ページにわたる綿密な研究計画調書(申請書)を提出します。そして複数の審査員(各分野の専門家によって構成される)がそれを読んで審査を行います。申請課題の採択率は年度によって若干変わりますが、だいたい25%前後の狭き門です。

詳しくお知りになりたい方は以下の日本学術振興会HPをご参照ください。

https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/index.html

言うまでもなく、教員の研究課題の一部は本学科5、6年次の学生たちが卒業研究として取り組んでいますので、あなたも将来このような最先端の研究を行う機会があるかもしれませんよ。

それでは、2021年度における本学科教員の採択課題(新規・継続を含む)をご紹介しましょう。

2021年度における本学科教員の採択課題(新規・継続を含む)

1.渥美 聡孝 講師
研究課題 ミシマサイコの増産を志向した発芽勢向上のためのシードコンディショニング開発
研究種目 科研費 若手研究
研究期間 2021-04-01 – 2023-03-31
研究内容 薬用植物ミシマサイコは根を薬用部位とし、様々な漢方薬に配合されます。近年、医療現場で漢方薬の使用頻度が増えており、その原料であるサイコの需要も増加しています。しかし日本産サイコの生産量はここ5年間減少の一途をたどっており、安定的供給には至っていないのが現状です。本研究課題ではサイコ増産の鍵となる、発芽勢(発芽が揃う割合)を向上させることを目的に研究を行います。私がこれまで栽培研究をする中で、①ミシマサイコは播種後、2~5週間をかけてバラバラと発芽すること、②その結果として雑草に負けたり発芽前に雨で種子が流れる、ことがあり、安定した生産が難しいと気づきました。これらの問題を解決してサイコの安定供給に寄与するため、播種後の早い段階で多くの種子が発芽する方法を開発します。
2.中村 賢一 講師
研究課題 新規C-配糖体代謝酵素の触媒メカニズムの解明
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2021-04-01 – 2024-03-31
研究内容 ヒトの腸内には約1000種類、100兆個の腸内細菌が棲息しており、腸内細菌による漢方薬成分の代謝は、漢方薬の薬効発現と密接に関与していると考えられています。本研究課題では、漢方薬成分として「C-配糖体」に着目し、腸内細菌由来のC-配糖体代謝酵素の機能解析や触媒メカニズムの解明を目的に研究を行います。
3.徳永 仁 教授
研究課題 処方提案・多剤服用防止のためのモダリティー等を活用した教育ソリューションの開発
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2021-04-01 – 2024-03-31
研究内容 薬剤師は服用期間中も患者をフォローすることが義務づけられ、医師に処方提案や多剤服用防止の形でフィードバックすることが求められています。近年では、薬剤師の病棟活動やカンファレンス参加の機会も増え、フィジカルアセスメントのみならず心電図・超音波・X線・CT・MRIなどのモダリティーから得られた結果を目にする機会も多くなりました。しかしながら、現在の薬学教育のなかにモダリティー等の活用術についての教材は少ないのが現状です。私たちは、これまでに多数のフィジカルアセスメント(身体的健康上の問題を明らかにするために、全身の状態を系統的に評価すること)に関連したeラーニング教材を開発してきました。この経験を基にICTを駆使して処方提案・多剤服用防止に向けたモダリティー等を活用した教育ソリューションを開発していきます。
4.木村 博昭 教授
研究課題 非アルコール性脂肪性肝炎の免疫プロテアソームの役割の解明:新規予防・治療法の開発
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2020-04-01 – 2023-03-31
研究内容 これまで、遺伝子改変マウスを利用して、糖・脂質代謝異常(肥満・糖尿病・インスリン抵抗性など)や様々な内分泌疾患(甲状腺疾患など)・炎症(マクロファージの活性化)に免疫プロテアソーム(細胞内におけるタンパク質分解機構)が関与していることを見出しています。本研究課題では、最近の医学の重要課題の一つである非アルコール性脂肪性肝炎(メタボリック症候群と関連)の病態発現・進行における免疫プロテアソームの役割を、遺伝子改変マウスや阻害剤を用いて解明し、新規予防・治療法の開発を目指します。また、本研究に至る詳細(これまで取得した研究費や論文など)や、関連した研究テーマについては、氏名のリンクから研究者情報のサイトにとんで、さらにresearchmapのリンクにアクセスすると記載されています。
5.吉田 裕樹 准教授
研究課題 食品成分によるTreg制御を介した食物アレルギー予防・治療法開発に関する基礎研究
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2019-04-01 – 2022-03-31
研究内容 私達は、これまでに糖尿病などの肥満関連疾患(生活習慣病)に対する新規予防・改善法開発のために、脂肪組織・細胞や免疫細胞の炎症・機能制御に対する食品成分や天然物由来成分の効果を評価し、その作用機序の解明を行ってきました。本研究では、食品成分による免疫細胞の機能制御を標的とした食物アレルギーの予防・治療法開発に関する基礎研究を行っています。
6.蒲生 修治 教授
研究課題 冠動脈バイパスグラフトのれん縮におけるインスリンと高血糖の影響
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2019-04-01 – 2022-03-31
研究内容 心臓に血液を送る冠動脈に動脈硬化が起こると心筋梗塞の原因となります。そのため、重症の冠動脈硬化症の患者に対しては、冠動脈の狭窄部位を迂回するための血管を移植する「バイパス手術」が行われています。このバイパス手術において、糖尿病を併発している患者では移植した血管が異常に収縮して詰まりやすいため、手術が困難であることが経験的に知られてきました。私たちは、糖尿病の患者さんにも安心してバイパス手術を受けてもらえるようにするために、なぜ糖尿病患者では移植血管の異常収縮が起こりやすいのかという謎の解明に取り組んでいます。本研究は、宮崎大学医学部附属病院をはじめとする複数の病院(心臓血管外科)との共同研究です。
7.内田 太郎 講師
研究課題 表面増強赤外吸収の偏光依存性と界面計測への展開
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2017-04-01 – 2022-03-31
研究内容 物質の反応性や機能性はその物質の表面や界面の原子・分子の構造に支配されます。これまで、表面増強赤外吸収(SEIRA)という金属表面吸着種の赤外吸収が増強される現象を用いた分光法(SEIRAS)で固液界面のその場測定を行い、機能性や反応性が起こる原因を分子レベルで明らかにしてきました。本研究では、SEIRAの偏光依存性を明らかにすることで、SEIRAS測定の可能性を拡げることを目的としております。
8.鳥取部 直子 准教授
研究課題 下肢静脈瘤の初期進展におよぼす血管機能破綻メカニズムの解明
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2017-04-01 – 2022-03-31
研究内容 下肢静脈瘤は、下肢の静脈壁の一部が何らかの要因で薄くなり、その血管が膨らんで、血液が滞ることで起こる疾患です。一旦発症すると自然治癒することなく徐々に進行し、重症化すると、ストリッピング手術やレーザー手術等の外科的手術の対症療法が主となります。下肢静脈瘤の発症および初期進展に関わる詳細なメカニズムの解明を進め、有効な薬物の探索に繋がる有用な基礎的知見を提供することを目的としています。
9.山本 隆一 教授
研究課題 冠動脈バイパス手術における血小板凝集能に及ぼすインスリンの影響
研究種目 科研費 基盤研究(C)
研究期間 2017-04-01 – 2022-03-31
研究内容 重症の冠動脈疾患には冠動脈バイパス手術が適用されますが、移植された血管は血小板の活性化が生じやすい状態にあります。活性化された血小板から放出されるセロトニンなどは、さらなる血小板の活性化を惹き起こすことによりバイパス血管の異常収縮を生じさせるため、手術の成功率に大きな影響を与えます。このバイパス血管の異常収縮は、非糖尿病患者に比べて糖尿病患者で生じ易いことが知られています。したがって、インスリン作用不全が血管平滑筋のみならず血小板の反応性をも亢進することを証明できれば、糖尿病患者でバイパス手術後に血管閉塞が生じやすい原因の解明につながると考え研究を進めています。

科研費以外にも、たくさんの競争的資金があります。

CREST

そのうちの一つであるCRESTとは、国が定める戦略目標の達成に向けて研究代表者が複数の共同研究グループを組織し実施するネットワーク型研究のことです。その研究内容を以下に簡単にご紹介します。

大倉 正道 教授
研究課題 蛍光インジケーターの改良と開発
研究種目 科学技術振興機構 CREST「オプトバイオ」(野田昌晴チーム:大倉グループ)
研究期間 2017 – 2022年度
研究内容 脳は常に体液(血液や脳脊髄液)の状態をモニターしており、その情報に基づいて水分/塩分の摂取行動や血圧の制御を司っています。しかし、その詳しいメカニズムはわかっていません。 本CREST研究では「近赤外光による遺伝子発現制御法」と色変換型Ca2+インジケーターによる「マルチファイバー解析法」を開発するとともに、「神経路選択的遺伝子導入法」を用いて、体液恒常性や血圧調節を担う脳内機構と神経回路を明らかにします。大倉グループはインジケーターの改良と開発を行います。

A-STEP(研究成果最適展開支援プログラム)

A-STEPとは大学・公的研究機関等で生まれた科学技術に関する研究成果を国民経済上重要な技術として実用化することで、研究成果の社会還元を目指す技術移転支援プログラムです。

甲斐 久博 准教授
研究課題 生薬の品質評価法を「量」から「質」に転換する分析システムの開発
研究種目 A-STEP トライアウトタイプ(標準)
研究期間 2021-05-01 – 2022-03-31
研究内容 本研究は、生薬の全代謝成分の網羅的な解析から薬効を予測する技術の実用化試験です。各成分の官能基は、薬効の良し悪しに影響します。本研究では、生薬に含まれる大多数の成分を個々に定量する従来の量的評価から、全代謝成分の官能基を一斉に評価する新しい質的評価への転換を目指します。この転換により、既存生薬の未知薬効の発掘、それに伴う生薬栽培・加工産業の拡大などが期待できます。

いかがでしたか?興味をそそる研究テーマはあったでしょうか?これらの研究内容について聞きたいことなどがありましたら、ぜひともオープンキャンパスや土日見学会にお越しください!

出張講義

九州保健福祉大学では、出張講義を行っております。出張講義をご依頼の方はこちらからお問い合わせください。

詳細はこちら