学部・大学院・別科

薬学科(6年制)

患者さんの幸せをプロデュースできる能力を身につける

薬学科の教育目標は、薬剤師国家試験合格のさらに先にあります。 現在、薬物療法の高度化により、チーム医療の中で「薬の専門家」としての薬剤師の重要性が益々高まっています。また、現在の薬剤師は患者さんのフィジカルアセスメント(実際に患者さんの身体に触れながら、薬の効果や副作用の早期発見を行うこと)などを実施して最良の薬物療法を医師に提案することが求められています。本学では、入学後の基礎科目から5、6年次の卒業研究までを通して、広い視野で自ら考え、適正で安全な薬物療法を支え、患者さんの幸せをプロデュースできる能力(知識・技能・態度)を身につけることができます。

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3つのポリシー

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卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)

薬学科(以下、「本学科」)では、本学の課程を修め、所定の単位を満たし、かつ地域医療や社会の期待に応えて、個々の患者や生活者のニーズに対応できる薬剤師となるために必要な下記の資質について、最低限以上の基礎的な力を身につけた者に学位を授与します。

1.薬剤師としての倫理観

医療人として高い倫理観と豊かな人間性を持ち、患者、家族、生活者の人権や尊厳に配慮して、人の命と健康な生活を守るために行動できる。

2.患者を中心としたチーム医療への参画

常に患者の立場に立ち、コミュニケーション能力をもって患者・患者家族・他の医療職種と相互の立場を尊重した人間関係を構築してチーム医療へ参画できる。

3.最適な薬物療法の実践

医薬品・化学物質等の生体及び環境に対する影響を理解した上で、適切に管理・供給し、個々の患者に適した安全で効果的な薬物療法を実践できる。

4.地域の保健医療への貢献

地域住民の視点に立ち、地域の保健医療のニーズを理解した上で、他職種と連携して人々の健康増進と公衆衛生の向上に貢献できる。

5.医療の進歩への貢献

自己研鑽に努め、問題点や社会的動向を把握し、解決に向けて取り組む姿勢を持つとともに、次世代を担う人材の養成を行い、薬学・医療の進歩と改善に貢献できる。

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教育課程編成の方針(カリキュラム・ポリシー)

本学科は、建学の理念および卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー、以下、DP)に掲げた目標を達成するために、次のような教育課程の編成・実施の方針にて教育を行います。

カリキュラム編成

薬学の専門科目を学ぶにあたり、基礎学力の向上を目指すリメディアル科目を1年生前期に集中して配置し、高度な専門科目にスムーズに移行できるようにカリキュラムを編成しています。専門科目では(DP1)薬剤師としての倫理観の醸成、(DP2)日本語・英語コミュニケーション力の向上、キャリア形成に関する理解および能力、グループ作業における役割の把握と判断力および実行力、(DP3)薬学および医療に関する専門科目の基礎知識と応用力、(DP4)地域の衛生環境の保持および個別化医療への対応力、(DP5)課題の発見と解決までのプロセスを遂行する基礎的能力、ならびに自主的かつ継続的に学習する能力を養う教育課程を編成しています。

学修内容・方法

薬学の専門領域は物理・化学・生物・数学の様々な知識の集合体であり、基礎的な科学力を身に着けておく必要があります。しかしながら、高校までに履修していない科目もあります。そこで1年次には、まず、薬学の基本的な学問体系を理解するための土台を築く目的で、リメディアル科目を履修し、基礎学力の補完と向上を行います。さらに、専門の基礎的な内容に加え、早くから臨床的な知識に触れるため、臨床系科目(臨床漢方入門(案))も配置しています。1年次後期から4年次は、分析化学、有機・無機化学、生化学等の専門科目を履修することにより、基礎薬学に関連する物理、化学、生物に関する基礎知識を身に付けます。生理・薬理学、臨床検査学等の専門科目を履修することにより、医療薬学に関連する分野を学修します。衛生薬学等の専門科目は、公害や感染症対策等に関わる薬事衛生分野を学修します。薬物治療学等の臨床薬学に関する科目は4年次以降に開始される実務実習において患者・家族の心理・社会的な背景を把握した上で薬物治療を実践するための学修を行います。

その他に、1年次~6年次を通じて、キャリア教育、QOLと人間の尊厳、法学、英語、臨床医学概論等の科目によって社会と薬学とのつながり(薬剤師のキャリアや倫理・使命)に対する意識を涵養します。

4年次後期には、講座・研究室配属が行われ、5年次より薬学研究として特別研究を履修することにより、薬学的課題を発見し、使命感と責任感を持って、研究倫理に則った研究を遂行する資質と基礎的能力を修得します。その準備段階として、総合学習Ⅰ~Ⅲや漢方治療学演習(選択科目)を履修し、教員が示した課題に対し、スモールグループディスカッション(SGD)などのアクティブラーニングにより課題解決能力を醸成します。なお、課題解決のための英語論文を理解できるようになるために、1~4年次において、必修科目や選択科目として配置されている英語系科目を履修します。

学修成果の評価方法
  • 各授業科目の学修成果の判定は、複数の学習評価を利用します。具体的にはそれぞれのシラバスに記載された方法により評価します。一部の科目については修得の過程も合わせて評価します。リメディアル科目および専門科目では、主に筆記試験や課題レポートを点数化して評価します。総合学習などのグループ作業を伴う科目や特別研究では、課題への取り組み状況や、学習および研究成果発表でのプレゼンテーションと質疑応答ならびに口述試験への対応力についてルーブリック表などを用いて点数化し評価します。
  • ディプロマ・ポリシーに掲げる5つの資質・能力については、定期的に評価を行います。カリキュラムマップに示す各科目には関連するディプロマ・ポリシーの番号が示されており、ディプロマ・ポリシーの番号毎に関連科目の点数やGPAを用いて評価することで、ディプロマ・ポリシーへの到達度を判定します。
1.教育内容
  • 基礎学力構築
    最適な薬物療法を実践するための基礎的な科学力を修得します。
  • 語学・情報教育
    患者を中心としたチーム医療へ参画するためのコミュニケーション能力や、医療の進歩へ貢献するための語学力と情報収集能力を修得します。
  • 使命感・倫理観構築
    薬剤師としての倫理観を獲得するための人権・尊厳・法令を配慮・遵守して行動する能力や、患者を中心としたチーム医療へ参画するためのコミュニケーション能力を修得します。
  • 化学・物理系専門教育
    最適な薬物療法を実践するための医薬品や化学物質等に関する薬学専門知識を修得します。
  • 生物系専門教育
    最適な薬物療法を実践するための生体メカニズムに関する医学・薬学専門知識を修得します。
  • 医療系専門教育
    最適な薬物療法を実践するための医薬品の作用機序等に関する知識や、地域の保健医療へ貢献するための公衆衛生に関する知識を修得します。
  • 薬剤系専門教育
    最適な薬物療法を実践するための医薬品の特性や使用法等に関する知識・技能・態度を修得します。
  • 薬事関係法規教育
    患者の人権を守り、薬剤師に必要な倫理観を持って、最適な薬物療法を実践するための各種法令に関する知識を修得します。
  • 統合薬学教育
    薬剤師としての倫理観、患者を中心としたチーム医療へ参画する能力、最適な薬物療法を実践する能力、地域の保健医療へ貢献する能力、医療の進歩へ貢献する能力を統括的に修得します。
2.教育方法
  • 各科目はシラバス(一般目標、到達目標、評価方法、オフィスアワー、授業内容などを示したもの)記載の教育方法に沿って行います。
  • チューター(学生担当教員)制度を取り入れ、各科目の理解度について面談を通し、フィードバックを行います。
  • 主体的な学びの力を高めるために、アクティブラーニングを取り入れた教育方法を学科基礎科目 や専門教育科目で実施します。
  • 薬剤師としての実践能力を養うためにフィジカルアセスメントを基盤とするアドバンスト教育を実施します。
  • 薬剤師国家資格に必要な専門的知識・能力の確認のために、段階を追ったプログラムを実施します。
3.教育評価
  • 学期末には、各科目の修得度を確認するために、シラバスに記載の評価方法に沿って合否を判定  します。不合格者には再試験を課します。
  • 4年次終了時には、「薬学共用試験(CBT、OSCE)」の合格を求めます。

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入学者受入の方針(アドミッション・ポリシー)

本学科は、高い倫理観と高度な専門的知識・技能をもった薬剤師を養成することを目的としています。また、旺盛な探求心を有し、協調性と広い視野をもって医療現場や地域の問題を解決できる人材の養成を目標としています。このため、次のような学生を求めています。

1.求める学生像
  • 医療人として、医療現場や地域で活躍するという強い意志・意欲を持った学生
  • 医療・薬学に強い興味を持ち、学習意欲が旺盛な学生
  • 薬学を学ぶために必要な科学的基礎知識と日本語・外国語の基礎学力を備えた学生
  • ひとに対する深い思いやりと優れたコミュニケーション能力を持った学生
2.入学までに修得すべき学力・能力

専門的な知識・技能を学習するための基盤となる以下の学力・能力。特に、医薬品の構造や人体への影響、生命現象のしくみを理解するための基礎となる化学の知識は重要です。

  • 「国語」:文章読解力、コミュニケーション力、表現力。
  • 「数学」:数学的思考力、表現力、基礎的な計算力。
  • 「理科」:自然科学の総合的理解力、論理的思考力。
  • 「英語」:読解力、コミュニケーション力、表現力。
  • 「その他」:社会や医療に関する情報の収集能力、表現力、礼節力。

取得できる主な資格の内容と活躍の場

薬学科

●薬剤師

「調剤・医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって国民の健康な生活を確保する」と、薬剤師法に定められた国家資格。近年、薬剤の選択や投与の量・方法・期間等について、医師へ積極的に提案することが求められており、チーム医療の担い手としての役割は増す一方。在宅医療やセルフメデュケーションでのヘルスアドバイザー、製薬会社の医薬情報担当職(MR)などとしてのニーズも高い。


○食品衛生管理者* ○食品衛生監視員*


[薬剤師国家資格を取得すると次の業務の資格も取得できます。]

向精神薬取扱責任者 医薬部外品・化粧品または医療機器の製造販売業の総括製造販売責任者 製造業の責任技術者 薬事監視員 麻薬管理者 環境衛生指導員 検疫委員 衛生管理者 船舶に乗り込む衛生管理者 外国製造医薬品等の国内管理人

薬剤師の仕事

これからの薬剤師の仕事

平成22年度 厚生労働省医政局長通達/薬剤師は薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について、医師に対し、積極的に処方を提案すること。具体例として薬物療法を受けている患者に対してフィジカルアセスメント、回診・カンファレンスへの参加を通じて患者の状態を把握すること。

平成24年度 診療報酬改定 病棟薬剤業務実施加算/薬剤師が病棟で医師らの負担軽減及び薬物療法の有効性・安全性の向上に資する一定の病棟薬剤業務を実施することで加算。

平成26年3月 臨床検査技師法改定/患者の自己採血を条件に、薬局で、血糖値、ヘモグロビンA1c、血中コレステロール等の血液検査を実施し、薬剤師が薬効や副作用の確認、健康指導などを行えるようになった。

6年制課程への社会的ニーズ〜臨床に強い薬剤師の養成〜

6年制課程への社会的ニーズ〜臨床に強い薬剤師の養成〜

薬剤師の養成課程が6年制となった背景には、医薬品に関して最も詳しい知識をもつ専門家への社会的ニーズがあります。また、そこには臨床での病態観察に基づく服薬指導や薬効評価をはじめ、薬剤の副作用防止など安全性の向上を薬剤師が医師と共に担うことで、医療の質と安全性をさらに高めるという狙いもあります。また、保険薬局での予防医学の実践や服薬相談など、地域に密着した保健活動も薬剤師に求められています。本学の薬学科は、これらの社会的ニーズを教育の柱としており、バイタルサイン(生体情報)を読む能力を備えるなど、“臨床に強い”薬剤師の養成に努めています。

学科長からのメッセージ

学科長 木村 博昭
学科長 木村 博昭

 みなさん、こんにちは!九州保健福祉大学薬学部 薬学科長の木村博昭です。

 薬学部(薬学科)に進学すると、卒業後は調剤薬局や調剤薬局併設ドラッグストア、病院の薬剤師として働くイメージを持っている方が多いと思います。ところが、実際には、薬学部(薬学科)の卒業生の就職先はそれだけに留まりません。保健所や科学捜査研究所、麻薬取締官、行政などの公務員として働く方もいます。また、薬品会社のMR(医薬品情報担当者)、MSL(メディカルサイエンスリエゾン)、医薬品研究・開発者として企業(製薬・食品・化粧品等)で働く方もいますし、CRC(治験コーディネーター)等の医療系の企業でも、薬学の知識を十分に発揮できます。このように、薬学部(薬学科)に入ってからも、様々な職業を選べるということを知っておきましょう。

 なぜ、薬学部(薬学科)を卒業後に、様々な職業選択が可能となるのでしょうか?それは、薬学がとても幅の広い学問だからです。6年間で学ぶ内容は、薬の分析法(物理)、薬の合成法(化学)、身体の構造としくみ(生物)、薬物による疾病の治療法(病態・薬物治療)、薬が効くメカニズム(薬理)、投与された薬物の生体内での運命(薬剤)、感染症とその予防について(衛生)、薬剤師・医療人が知っておかねばならない法律(法規・制度・倫理)、調剤や製剤の技術・医療人としての態度や言葉遣い(実務)など、多岐にわたります。大学で得られた幅広い知識を活用できるため、様々な職業を選択することが可能となるのです。

 私は、薬学部で勉強して、自分が面白いと思うことに出会い、その分野の研究・勉強をしてきました。皆さんも、薬学部(薬学科)に進学し、様々な科目を勉強していると、きっと面白いと思える科目に出会えるはずです。また、将来自分の就いた職業に大学で学んだ内容が活かされると、いつもやりがいを持って仕事ができるようになります。

 九州医療科学大学薬学部薬学科では、自分自身の状況を省み、自分自身がどのようにすれば成長できるかを考え、将来、社会に貢献できる学生を育成します。「有能な薬剤師になりたい!」「薬学の知識を活かして有能な社会人になりたい!」と思っている中高生の皆さんは、ぜひ本学に来てください。熱心な教員や真摯に学問に打ち込む学友と一緒に多くを学び、本当に有能な薬剤師(社会人)になることを実現してみませんか?

活躍の場

  • 薬学科

    • 病院
    • 診療所
    • 保険薬局
    • 行政 監視指導 試験検査 啓発活動など
    • 医薬関連企業 医薬情報担当職 創薬研究職など

Topics

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精巧な患者ロボットを用いた「ベッドサイド実習」などにより患者さんのバイタルサイン*が読める薬剤師を育成しています

本学薬学科では、「患者ロボットを用いた模擬ベッドサイド実習」などを全国に先駆けて導入し、薬効評価と副作用防止の推進を目的に“患者さんのバイタルサイン*(生体情報)が読み解ける薬剤師”を育成しています。この臨床に即した独自の取組は、文部科学省の教育支援プログラム「医療人GP」に採択され、全国の薬学教育の模範として高く評価されています。

  • バイタルサインとは……生命に危険が迫っていないかを判断するための指標となる基本的な生体情報。 意識、脈拍(心拍数)、血圧、呼吸、体温など。

在学生メッセージ

めざしているのは総合病院でチーム医療のメンバーとなり、疾病を抱えて辛い思いをされている患者さんを医師と連携しながら支える薬剤師になること。こうした目標に向かって、九保大の薬学科が特色とする充実したベッドサイド教育を受けられることに心強さを感じています。あわせて患者さんに投与した薬物の体内動態についてももっと理解を深め、臨床での強みにしたいと思っています。また、薬学科の先生方は国家試験対策にとても熱心です。おかげで私たち学生も日増しに学力が向上しており、めざす“全員合格”への自信も増す一方です。

尾中 宏彰さん

薬学科4年
延岡高等学校(宮崎県)出身