学生都々逸(その1)
皆様は都々逸(どどいつ)というのをご存じですか?
7・7・7・5 の口語の定型詩で、江戸時代末期に成立したとされています。もともとは男女の恋仲などを詠った艶っぽいものが多かったのですが、現在では様々な題材が盛り込まれています。
古いものでは、
・恋し恋しと 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす (作者不詳)
・惚れて通えば 千里も一里 逢えずに帰れば また千里 (作者不詳)
など。
新しいものでは、
・読みつくせない 蔵書の山を 読みあがくほど 無知を知る
(ブログ『やわらか図書館学』様
https://yawatosho.hateblo.jp/entry/2019/07/29/222815 より)
・恋の花咲く ロマンの都 女ばかりに 気もそぞろ 夢もほころぶ 小意気なジルバ 君と銀座の キャフェテラス
(サザンオールスターズの「東京シャッフル」)
など、J-POPの詞でもときどき用いられます。
私の「基礎演習」のオープニングは、社会人レベル漢字の書き取り(大学の授業なのに、と思わないでください。基礎演習の趣旨に照らし重要な取り組みなのです)をすると同時に、言葉のトレーニングや学生間のコミュニケーション増進を兼ねて、この都々逸を一つこしらえてもらっています。「お題」は漢字から各自が選んだり、時には統一テーマを決めたりもします。
幾つかここでご紹介しましょう。
・魚が好きな 私の願い 乱獲するの 止めてくれ
(その通り!他の生物の命をいただいて私たちは生きる。大切にしないとね。)
・明日誕生日 起きるとそこに 包装された プレゼント
(家族のぬくもりとお互いを思いやる気持ち、これは何ものにも代えがたいですね!)
・顔は似てるが 服の好みは みんなバラバラ 三姉妹
(個性的なこと、多様性はすばらしい!)
・大学デビューで 彼女ができる 友の話も 僕には無縁
(まだあと3年以上あるぞ!頑張れ!)
・今まで大事に 育ててくれて 母があなたで よかったよ
(思わずウルウルしました。お母様を大切にね!)
家族や友だちの話題が多いですね。字余りもありますが、そこはご愛敬。ひとりひとり発表してもらった後で、しばしのコミュニケーションを楽しむ、というわけです。
授業のこんなひと時が、とても豊かに感じられたりする、大学の朝なのです。
第二弾もお楽しみに。
(登坂 学)