少々大げさかもしれませんが、ふとしたことに「生きている喜び」を実感することがあります。11月23日に宮崎市のメディキット県民文化センターで,ベートーヴェンのピアノ協奏曲『皇帝』と交響曲第7番の演奏会がありました。韓国出身のチョ・ソンジンのピアノ,マレク・ヤノフスキ指揮のケルン放送交響楽団の演奏です(写真)。
チョ・ソンジンさんの演奏は9年前,彼がまだ16歳の頃にNHK交響楽団とショパンのピアノ協奏曲第1番を聴いて以来2度目です。その間,ショパン国際コンクール優勝など,めざましい活躍を続けています。特に彼の活躍に注目していた訳ではありませんが,その技術や表現に圧倒され嬉しくなりました。
休憩中に知り合いとばったり会って話をした後,自席に戻ろうとしたら,「長友先生」と女性に呼び止められました。「担任して貰ったYです」と名乗ってくれました。(最近は,教え子だと分かっていても,名前が出てこないことがあるので,これは助かりました)。Yさん。コンサートの会場だったせいなのか,修学旅行の際に,親戚の人が東急関係に勤めていて開館間もないオーチャードホールを案内するからと宿泊所からの外出を許可したことを思い出しました。そのことを話すと,「そうです,そうです」と喜んでくれました。2部の始まる時間が迫って来ましたが,同じ高校の男性と結婚して二人の子どもがいることを話してくれ,握手して別れましたが,私の方も嬉しい気持ちで席に戻りました。交響曲7番の演奏も素晴らしいもので,オーケストラの迫力に圧倒され,その余韻を胸に帰途につきました。
さて,ベートーヴェンの交響曲全集が出ると,食指が動きます。オンラインショッピングで,ユッカ・ペッカ・サラステという指揮者による全集(輸入盤)が出ていることの案内が来ました。オーケストラはWDR Sinfonieorchesterと書いてあります(写真)。注文して聴いて意外な発見がありました。全集を購入した場合,私は,3番の『英雄』から聴きます。その4楽章の冒頭の,通常ピチカートで演奏される部分が弓で演奏されていたのです。こうした演奏は過去に二人の指揮者が行っていました。ともにN響を振ったことのある,カイルベルトさんとマタチッチさんです。それ以後,この形の演奏を聴いたことがなかったので,驚くと同時に懐かしさすら覚えました。
さらに,WDR Sinfonieorchesterは,何と生で聴いたばかりの上述のケルン放送交響楽団のことだったのです。改めて偶然の面白さに自分自身驚いています。そしてCDの解説を眺めていると,ケルンはドイツ語表記でKöln,英語ではCologneだということにも気づきました。
11月23日のコンサートは私に音楽を聴く喜びだけでなく,教え子との再会や新しい知見を与えてくれて,ささやかな幸福感に浸ることができています。
臨床福祉学科 長友道彦でした。