人の気持ちに寄り添う

本学も6月1日から対面授業が再開しました。久しぶりに学生が行き交い賑わうキャンパスをみて、少しほっとしました。このまま感染が終息に向かってほしいです。

 

6月2日付の朝日新聞朝刊に、福祉を学ぶ意味を考えさせてもらえる投書があったので紹介します。

 

高校生が書いたもので「わたし流「出張デイサービス」」というタイトルでした。

内容は、新型コロナウイルスの影響による休校中、母に「何かしたら?」と言われて、隣家に住む一人暮らしのおばちゃんの家に「出張デイサービス」に行くというものでした。

普通、デイサービスといえば、利用者がデイサービスセンターに通所し食事や入浴、レクリエーションなどをして過ごします。在宅サービスのなかでも中心的な役割を担っている福祉サービスです。それをヒントにして、彼女の方からおばちゃんの家に出向いていき、楽しい時間を過ごしてもらおうと考えたようです。中学生になってから会う時間が減っていたので毎週月曜日に2時間通い、2人で話をしたりゲームやクイズをして思いっきり笑って過ごしました。最後のデイサービスの日におばちゃんが「とても楽しかった。ありがとう」と言ってくれたことで、「学校生活以外にも自分のやれることがあるんだ」という言葉でこの文章を結んでいました。この投書の中で最も考えさせられたのは、次の部分でした。

 

おばちゃんは先週2人でやったことを覚えていない時があって、少し怖かった。なんて声をかければいいか悩んだけど、笑いながら「先週もこれ、やったよ」などと伝えた。忘れたら、何回も言えばいい。

 

この「怖かった」という部分に福祉を学ぶ大きな意味があるような気がします。物忘れのあるおばちゃんをみて、「経験したことを忘れる恐怖」「おばちゃんのこれからの生活に対する心配と不安」「かわいがってくれている私のことも忘れてしまうのではないのかという悲しみ」、いろいろなことを考えた結果の「怖かった」なのかもしれません。

臨床福祉学科で福祉を学んだ学生には、本人だけでなくご家族・ご親族など関わりのある方々にも寄り添い、それぞれの心の中にある思いに気づける人に成長してほしいです。

 

臨床福祉学科 三宮基裕