公共施設のあり方を考える

公共施設は身近にたくさんあります。図書館や文化センター、体育館、競技場などのほかに、学校や福祉施設、公民館なども公共施設です。

先日、延岡市の公共施設のあり方を検討する委員会に出席しました。

 

延岡市が保有する建築施設は333施設(1,412棟)あるそうです。これらの施設の多くは人口増加の時代、つまり1970年代から90年代ごろにかけて整備されてきました。古いもので築50年が経過しています。とくに1981年以前に建てられた建物は現在の耐震基準を満たしていないものもあり、大きな地震に対する対策が必要です。また、築年数が20~30年であっても、定期的なメンテナンスをしなければ建物の寿命を早めることになります。延岡市の場合、今後40年間の更新費用として1年あたり104億円ほど必要と推計しています。

この委員会は、今ある公共施設を今後どう維持するのか、つまり「廃止するのか」「更新するのか」「立て替えるのか」といったことを、各団体の代表や公募による市民の代表によって意見を出し合い、施設のあり方を検討することを目的にしています。

それぞれの団体の視点からいろいろな意見がでましたが、とても印象に残った意見があります。

 

ある地区の区長の意見

「利用目的に沿った施設利用だけでなく、災害時の避難所としての役割がある」

 

青年団の方の意見

「長くその土地にある施設は住民にとって愛着があり、人によっては拠り所になっている」

 

まちづくり活動をされている方の意見

「人通りが少なく使われなくなった施設でも、人があつまる仕掛けに施設が活用できれば、賑わいが取りもどせるのではないか」

 

建物にかかるお金は建築費用だけではありません。建てた後もそれを維持するためには定期的なメンテナンスが必要で、そのためにはお金がかかります。メンテナンスをしなければ建物はすぐに傷んでしまいます。

延岡市においても人口の減少を避けることは難しく、今ある公共施設をすべて維持し続けるだけの財源を確保するのは難しいでしょう。だから「古くてあまり使われない施設は廃止する」という方向は簡単な方策かもしれません。

ただ、先ほど紹介した意見を聴いていると、「利用が少ない」というだけで廃止するのは、長く施設を利用してきた住民にとって悲しいことだと思います。今の住民のニーズにあわせて柔軟に利用変更ができることや、経費的にも効果的な維持管理方法を検討し、大切に施設を使いつづけることも考えていく必要があると感じました。

 

公共施設のあり方は「まちづくり」の視点で考える必要があります。福祉を学ぶ学生も「福祉のまちづくり」という点から、柔軟な発想で既存の施設の利用を考えて欲しいと思います。

 

臨床福祉学科 三宮基裕